控え目に甘く、想いは直線的
褒められているのかけなされているのか分からない。


「うん。かわいい夕美が入社してくるのを楽しみにしていた。恋に慣れていないのか涼を見る目は本当にハートでかわいかったけど、その目を俺に向けて欲しいと思った。どうしたら俺を見てくれるのか悩んだんだよ。これでもね」


「要さんでも悩むんですか?」


「失礼だな。かなり必死だったんだけどね。だってさ、夕美は涼が好きだったんだから。好きな男がいる女を自分のほうに向かせるのは簡単なことじゃない。だから、ちょっと汚い手を使った」


「汚い手?」


どんな手を使ったんだろう。

思い当たる節がない。

顎に手を当てて考える私を要さんは優しく笑った。


「婚約者がいる涼をいつまでも想っていても無駄だと教えるために、ここに来たんだよ。あの日、涼に会ったのは偶然ではなくて、必然だったわけ。夕美には辛い想いをさせたけど、諦めて欲しかった」


涼さんがあの日、ここに来ることを知っていた上で歓迎会の予約をしたという。
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