控え目に甘く、想いは直線的
「私の気持ちです。それと要さんの気持ちを聞こうと思っていました」


「あー、なるほど。で、満足した?」


私が「はい」と答えると、座り直した要さんが今度こそしっかりと立ち上がり、私に手を伸ばしてきた。口元を緩めながら、その手を掴んだ。


二人しかいないエレベーターは下降したが、すぐ下の階で止まり、夫婦らしい二人が乗ってくる。


「あら、要」


「わっ、ビックリした」


要さんの知り合いかな。女性が私を上から下までじっと見る。

隣の男性も……あれ? この人、うちの会社の社長に似てる気がするけど、もしかして似てるのではなく本人?


「そちらの方は、お付き合いしてる方かしら?」


「ああ、野々宮夕美さん。夕美、俺の父さんと母さん。もちろん父さんのほうは知っていると思うけど」


「俺を知っているということは、うちの会社の子かな?」


やっぱり本人だった!

まさか要さんの両親に偶然とはいえ、こんなところで突然会い、お付き合いしてる方と紹介されるなんて思いもしない。

突然の出来事に戸惑ってしまうが、とりあえず挨拶だけはしておかないといけない。
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