控え目に甘く、想いは直線的
ドアが閉まってからまだ肩を抱いていた要さんを見る。要さんは私の髪を撫でた。


「寿司食べたら、うちにおいでよ。涼は美月ちゃんと関西方面へ遊びに行ったから、今日も明日もいない」


「ちょっ、ちょっと待ってください。心の準備が必要だから前もって言ってくださいってお願いしてますよね？」


「だから、前もって言ってるじゃないか」


「前もって……だって、今夜のことですよね？ 今はまだ午前中ですけど、今日の今日は前もってにはならないですよ」


要さんが思う前もってはいつなのかと不思議になる。私の定義だと三日前である。どんなにギリギリでもせめて前日だと思う。当日に言うのは突然だ。

でも、要さんは突然今すぐ来いと言っているのではないから、前もってなんだと言いたいようだった。


「まだ午前中じゃないか？ 夜まで時間があるし、今から心の準備くらい出来るだろ？」


時間があると簡単にいうけど、半日もない。心の準備だけではなくて、着替えの準備などもある。それなのに今夜来いは困るというものだ。
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