控え目に甘く、想いは直線的
「着替えもなにもないですよ?」


「寿司食べる前に買いに行くから大丈夫だ」


「わざわざ買うんですか? そんなもったいない……」


「俺が買いたいんだから、気にするなよ。下着もちゃんと買ってやるから」


「下着? いえいえ、そんなのいらな……くはないですけど」


必要なものだけど、一緒に買いに行くのは恥ずかしい。要さんにはどこかで待っていてもらおう。


「とりあえず、帰りまでに心の準備はしておいて。あ、拓人、お帰り」


「ただいま……ほんと要さん、ずるいな」


大石さんが静かに戻ってきた。あまりにも静かすぎて、私たちはすぐに気付かなかった。それに、元気がない。もしかして柊花が関係してるのかな?


「ダメだったのか?」


「そうですよ。普通はそううまくいかないもんなんですよ」


元気のない大石さんの返事は不貞腐れている。柊花が断るだろうという予想は出来ていたけど、テンションの低い大石さんを見るとかわいそうになる。

いつもならキーボードを叩く音も軽快なのに、今日は途切れ途切れになっている。
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