控え目に甘く、想いは直線的
そして、肩に手を置かれる。


「兄さんから聞いたよ。夕美ちゃんの初めての彼氏が兄さんだとはビックリだけど、良かったねー」


「は? はあ……」


私の恋愛経験のないことを涼さんに話したことはない。要さんか大石さんから聞いたのだろうか?

要さんが饒舌とは思えないけど、付き合っていることを知っているなら、要さんが話したのかもしれない。

自分の知らないところで話が伝わっているとなると、恥ずかしい気持ちになる。私は付き合うことになったその日のうちに柊花と姉には報告したが。


「兄さんはクールに見えるけど、本当は優しいし、甘いからね。あ、もう知ってるかな? 今夜から俺いないから気にせず、楽しんでね」


「えっ、あ、はい。ありがとうございます」


二人が住む部屋の女性入室は禁止のはずだから、今夜私が行くことを知っているとは思わなかった。当の本人の私でさえもついさっき聞いたというのに、涼さんは前から知っていた感じだ。

だったら、もっと前に話してくれればいいのに。


「はい、夕美ちゃんにあげる。来てね!」
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