控え目に甘く、想いは直線的
「夕美、返事は?」


「は、はい! ありがとうございます!」


「それはオーケーということでいい?」


私はこくこくと何度も頷いた。

まさかの連続だ。ここでプロポーズされるなんて、夢にも思っていない。


「ほら、野々宮さん。それ貸して」


いつのまにか隣に大石さんがいて、私が持っているブーケを持ってくれた。


「夕美、手」


「手? あ、はい!」


「そっちじゃない」


「えっ、ああっ! すいません!」


右手を先に出した私は咎められて、慌てて左手に代える。

指輪はしたこともなければ貰ったこともないから、その指輪をどこに嵌めるのか咄嗟に分からなくなった。

エンゲージリングは左手にするというのは常識なのに。

要さんが箱から指輪を取り出すと、空になった箱を大石さんが受け取る。

要さんは左手を私の左手に添えて、右手で私の左手の薬指に指輪を嵌めた。

サイズはピッタリだった。


「一生夕美を大事にするから、一生俺のそばにてください」


「はい、よろしくお願いします」


真っ直ぐな想いを真っ直ぐ返した。

私が返事をすると先程よりも大きな拍手が「おめでとう」の言葉と共に沸き上がった。


ーendー
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