控え目に甘く、想いは直線的
おまけだけど、涼さんに近付くために入社出来たことは本当に嬉しい。

おまけ採用でも表向きは立派な採用。入社出来たことは誇りだし、親も喜んでくれた。涼さんにも伝えたら喜んでくれるかな。

まだ私のことを覚えていてくれるかな。

説明が終わる頃、人事部のドアをノックする音が聞こえた。


「あ、来たかな。俺、取ってきますね」


「ああ、よろしく」


大石さんが応接室を出ていくと、部長はテーブルの上の資料を片付け始める。私もつられて動いた。

そこに大石さんが黒いお弁当箱を三個持って戻ってくる。


「はい、お待たせ。今、お茶を持ってきますねー」


「あ、私が淹れます」


雑用は新入社員の役目。率先して動こうと立ち上がる。大石さんは優しく笑って、給湯室の場所を案内してくれた。

コーヒーメーカーなら人事部の部屋にあるが、給湯室は各階に一つとなっている。10階には人事部の他に、監査室と会議室があるので共同で使うそうだ。


「ここにあるのどれでも使っていいから。よろしくね」


「はい、分かりました」
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