控え目に甘く、想いは直線的
突然の事実に胸がズキズキと痛むが、平気な振りをして笑った。

部長から不躾な視線を感じたが、それには気付かない振りをした。きっと私をバカだと思っているに違いない。

涼さんを好きになって、会いたくて、涼さんが働く会社に入社した私はバカだ。涼さんに彼女や婚約者がいるかもしれないと一度も考えなかった。

涼さんに会いたい……そんな気持ちしかなかった。


想いを告げていないけど、これは完全なる失恋。

初めての恋は呆気なく終わってしまった。


涼さんと美月さんも予約をしてあるらしく違う席へと案内される。私のところから見えない場所に安心した。仲の良い二人を見たくはない。


「野々宮さん、ごめんね。言ってあげればよかったんだけど」


「いえ、大丈夫です」


大石さんは知っていたらしい。でも、言えなかった気持ちも分かる。私自身、ハッキリ好きだと話してはいなかったし。大石さんはいつも忙しく動いていたから話す暇もなかっただろう。

これ以上余計な心配をされたくなくて、またもや心と裏腹の笑顔を見せた。
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