控え目に甘く、想いは直線的
「だけど?」と逆に聞かれる形になるとは予想もしていない。

大石さんはまだにこにこしていた。


「本当に一番最後なんですね」


当たり障りのなく返すが、大石さんが「プッ!」と噴き出して笑う。おもしろいことは何も言っていないですよ……。


「野々宮さんはやっぱり真面目で、いい子だねー。ね、要さん」


「……30分後に打合せする」


部長は大石さんの声かけを無視して、パソコンを操作する。私、もしかして返す言葉を間違えたかな。


「野々宮さん、打合せまでにざっと目を通しておいて。あとで俺も説明するから」


「はい、分かりました」


大石さんは、パソコンを操作する部長を見てから、時間を確認して、仕事モードの表情に切り替えた。今日も午後から研修があるからやることは多い。

忙しい二人の邪魔にならないよう、部長に渡されたいくつかの冊子の中で一番上にあったのをめくってみる。

目次のあとに、ストレスチェック制度の目的が書かれていた。



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