控え目に甘く、想いは直線的
注意されると思って身構えていたので、部長にしては優しいと思われる部類の言葉を掛けられて一瞬呆けてしまった。

鋭い視線を向けられて、急いで大石さんの隣に座る。謝る時間など勿体ないから、早く座れと目で訴えられているように感じた。

優しいと感じたのは気のせいだったのかもしれない。


「野々宮さん、本当に大丈夫だよ。要さんは真剣に読んでいることに感心していたんだよ。だから、そんなに慌てなくてもいいんだよ」


「えっ? 感心……ですか?」


「拓人、お前はいちいち余計なことを言わなくていい。まず二ページから開いて」


大石さんは小さく舌を出して、「はいはい」と返事をした。

いつも明るくて優しい大石さんがいてくれて本当に助かる。部長と二人だけだと、私はストレスが溜まりまくりになりそうだ。

しかし、部長は厳しいだけの人だと思っていたけど、意外に優しいのかな。

そんなことを頭の片隅で考えながら、今日の研修概要を聞いていた。
< 69 / 224 >

この作品をシェア

pagetop