控え目に甘く、想いは直線的
「あの、行こうと思っていたのは定食屋さんですけど」


行く店が決まっているから、部長が別の店に行きたいのなら別々にしたほうがらいい……という意味を込めて遠回しに断る感じで言ってみた。

柊花は私が言ったこと小さく頷く。柊花も出来ることなら断りたいと思っているに違いない。


「ああ、あそこの定食屋ね。今日の日替わりはなんだろうな? とりあえず急ごう」


部長がさっきまで何を食べたいと思っていたのかは分からないが、日替わり定食を食べることに切り替えてしまったようで、我先にと進んでいくから私と柊花は追いかけるしかなかった。

私が柊花からのメッセージに気付いて、早くに降りていたらこんなことにはならなかったと思うと、柊花に申し訳ない気分になる。


「ごめんね」


部長に聞こえないよう小さく謝る。柊花も「大丈夫」と小さく答えた。

オフィスから徒歩三分のところにある定食屋は私たちが出遅れたせいもあり、満席状態だった。一人で来てるなら相席することも出来るが、三人だとそうもいかない。
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