控え目に甘く、想いは直線的
「はい、頑張ります。……夕美もやっぱり一通りの製品は覚えるの?」


「私はまだなにも覚えてないけど、覚えるのかな? どうなんでしょうか?」


味噌汁を飲もうとしていた部長に問いかける。私のことだけど、業務内容については私よりも部長のほうがはるかに分かる。

部長はお椀を持った状態で、じろりと隣に座っている私を見た。分からないのがいけなかったかな?


「野々宮には必要がない。野々宮が覚えることは他にあるから今のところは覚えなくていい」


「今のところは、なんですね」


「暇な時間を見つけて覚えておいてもいいけどな」


暇な時間……今のところはない。手が空きそうになると大石さんが次の指示を出してくる。

本当によく見ているから、休む間がないけど、忙しいというほどではない。多分、調整した量を与えてくれているのだろう。

それでも暇だと思えるほどの余裕はない。


「暇があったら、覚えようと思います」


「微妙なやる気だな」
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