控え目に甘く、想いは直線的
とりあえず指示されたところを加える。あとは大石さん待ち。

そろそろ戻る時間だ。その間にトイレに行ってこよう。


「野々宮、どこ行く?」


「あの、お手洗いに」


「……ごゆっくり」


呼び止められてなにかと思ったけど、特に用はなかったらしい。それにしても集中してパソコンと向き合っていたように見えたから、静かに動いた私に気付くとは思わなかった。

みんな気付くものなのかな。

私だけが気付かないのかもしれない。


トイレから出て、人事部へ歩いていると前から大石さんが歩いてきた。


「お疲れさまです」


「うん。野々宮さんもお疲れー」


大石さんの明るい声を聞くとホッと出来る。


「戻りましたー」


「お疲れ。拓人、野々宮が集計したのを見てあげて」


「了解です。野々宮さん、貸して」


「はい。お願いします」


部長に言われて直したものを渡す。

大石さんは部長よりも時間をかけて見ていた。
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