雨も好き。
「翔ちゃんおまたせ!」

満面の笑みで駆け寄ってくる。

「ん。...あれ?りんご飴は?」

「あー、さっきぶつかった時落としちゃったから捨ててきた。」

そして、おもむろに巾着から紐を取り出すと、ぐるぐるとなにやらやり始めた。

「なっちゃん、太鼓でも叩くの?」

「違ーう!」
来て来てと、僕の手を引いている。

ナチュラルに手、繋いでるんですけど。

顔が緩む。
僕って意外と単純なのかも。

連れられた先は、《金魚すくい》

「翔ちゃん、勝負だ!」

意気込むなっちゃん。

「僕、上手だよ?」

「あたしだって!負けたほうがりんご飴奢りね!」

それ、なっちゃんが欲しいだけでしょ。まったくもう。

「わかった。」

なっちゃんは大きく深呼吸すると、勢いよくすくいあげる。

もちろん、そんなことをしたらオチはわかる。

見事な大穴を開けた。

しょぼんとして、オマケの小さな1匹を貰っている。

その横で淡々とすくい続ける僕。

「お、兄ちゃん筋がいいねぇ。隣の姉ちゃんとは大違いだな。」
白髪のおじいさんがそう言って笑うと、隣でムスッとしている。

最後に大きい出目金をとって、少し穴があいた。まだできそうだったが、そこで切り上げた。
< 112 / 214 >

この作品をシェア

pagetop