雨も好き。
傘に当たる雨音。

これもあいつを思い出す。

どこにいても、何をしても、あいつの顔が思い浮かぶ。もう俺は重症だ。

すると、向かいから春花の姿。

相手も俺を見つけたらしい。
ひらひらと何度か手を振って合図をした。

自然と立ち止まる。

すると、
「なーに思いふけってんの。遠くから見たって分かる程よ。」

春花は俺のことはお見通しだ、きっと。

昔からそうだった。

中3のあの頃を除いては、だが。

「どうせどこに行く気もなかったんでしょ。付き合いなさいよ。」

ほら、やっぱりな。
春花には敵わないな。

「敵わないなんて言わないで。」

「え?俺今声に出てた!?」

「声には出てなくても、フキダシが見えんのよ、あんたは。」

本当にもう、お手上げだ。

黙って春花の後ろを追った。
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