雨も好き。
放課後─

「おっせーよ。」

「しょうがないじゃん、トイレ掃除だったの!」

あっそう。とばかりに、またシャーペンを走らせる瑛星。

勉強を開始して20分、この沈黙。
その中に瑛星のシャーペンを走らせる音だけが響く。

「ねえ、瑛星?」

「ん?」
不意にこちらを見られると、

どきん。

整った顔が、きれいな目が、あたしを見つめる。

「あたし、いる?」
とっさに目をそらしながら聞く。

「いる。」
そう言って、また沈黙。
わけがわからない。なんだこいつ。

「...浴衣、似合ってた。」

え ?

「さすが、寸胴のぺちゃぱいだな!」

きーーーっ!

「なによ!べつにあんたの為に着たんじゃないし!?」

「知ってる。」

あ。

瑛星に嘘をついて、翔ちゃんと行った夏祭り。
瑛星を傷つけたのはこれで二回目。

それでも瑛星は、あたしのことが好きなのだろうか?
こんなに傷つけたのに。
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