雨も好き。
しばらくの沈黙。

「俺、先生に報告してくるわ。」

そう言って瑛星が保健室から出ていった。

手元の時計は5:30を指していた。

倒れてから、だいぶ時間が経っていたらしい。

運動会も終わってしまっていた。

遠くからは、運動部の声が聞こえてくる。

もう部活の時間か。

ダンス部は今日の活動はないけれど。

すると、

ガラガラ、と、保健室の戸が開く。

「帰るぞ。」

2人分の鞄を持った瑛星が、帰ってきた。

駅まで、なんとなく何も話さずに歩く。

それでもしっかりと手は繋がれていた。

駅につくと、いつもは反対のホームへ向かう瑛星が、手を離さずに同じ方向へ歩いてくる。

「...家まで送る。」

大丈夫だと言っても、今日のあたしには説得力がない。

その言葉に甘えて、家まで送ってもらった。

「じゃあな、今日はしっかり休めよ。」

なんだか今日の瑛星は口数が少ない。

でも、変わらず優しい。

この人を大切にしなきゃ。

そう強く思った。
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