雨も好き。
昨日決めた場所で、待機。

瑛星との初デートだ。

手元の時計を見ると、10時まであと20分もある。少し早かったかな?

結局昨日は2時間近く悩んだ末、無難に秋らしいワンピースに、低めのヒールとクラッチバッグ。

絶対に外さない鉄板で来たつもりだけど、やはり瑛星と会うまではドキドキだった。

ちゃんとドキドキしてる、あたし。

そんなことに少しホットしたりして。

すると程なくして瑛星がやってきた。

ひらひらと小さく手を振ると、よっ!とでも言うように軽く手を挙げて見せた。

「ごめん、待った?」

「んーん、全然。今来たとこ。」

なんだか、デートみたい。って、デートなんだけど。

でもなんだか胸にチクリと刺さるものがあった。

そういえば、夏祭りのとき、同じような会話を翔ちゃんとしたんだっけ。

また翔ちゃん。ダメだってば、夏海!

ぶんぶんと頭を振り、消し去ろうとすると、瑛星が不思議そうな顔でコチラを見つめ、フッと笑った。

「ちょ、なんで笑うのよ!」

「いーや?相変わらずおもしれぇなと思って。」
そう言ってクスクス笑う。

なによ、もう!

「悪い悪い、少し早いけど、中入るか?」

そう言って、瑛星はさりげなくあたしの手をとった。
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