雨も好き。
駅につく頃にはびしょ濡れだった。

タオルなんか持っていなかったから、今日使った体育着のシャツで大雑把に拭いた。

そしてホームで電車を待っていると
反対のホームに夏海が降りてきた。

気まづいな...

そう思っていると、夏海は俺に気づくこともなく、真っ直ぐ駆け寄った。


─古賀翔馬。


“翔ちゃん”を見つけたときの輝いた顔。
俺には見せない顔。

と、その瞬間─
古賀が夏海を抱き寄せた。

思わずベンチから立ち上がってしまった。

夏海も抵抗せずに、そのまま顔を埋めている。

俺は石のように固まっていた。

そして、電車が来る直前、古賀から離れた夏海は、ようやく俺に気づいた。

その曇った顔が、また俺の心を乱した。
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