雨も好き。
バスを降りると、そこには劇場が。

「ここ。」

最近よく見かけるポスターがずらりと貼られている。

『heart〜本当の気持ち〜』

「ここ、春花のおじさんがやってる劇団なんだよ。結構人気なんだぜ?」

人気があることは知っていた。

というより、ポスターのお目にかかる回数を考えればわかる。

春花のおじさんがやってるという話は初耳だ。

少し胸がチクリとした。

席に座って、左の瑛星をちらりと見る。

そういえば、今日手も繋いでない。

そう思って二人の間の肘掛に目を落とすが、瑛星の右手は乗っていなかった。


ビーっと始まりの合図とともに、会場が暗くなった。

スポットライトの先には、一人の男性が立っていた。

そこから展開される恋の物語。

終わる頃に、あたしは俯いていた。

見ていられなかった。


なにこれ、まるで私みたいじゃない。


自分の未来を描かれたようだった。

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