雨も好き。

夏海side

走る、走る、走る─

いつもなら、とっくに燃料切れだ。

知るかそんなもん。

バスは先程行ったばかりだった。

駅までそのまままた走る。

今日、ヒールじゃなくてよった。

そんなことが頭をよぎり、朝遅刻した自分に感謝してみたり。

改札を抜けると、ちょうど電車が来たところだった。

乗り込んで席に座るが、まだ出発しないのかと焦る気持ちが止まらなかった。

翔ちゃん、翔ちゃん、翔ちゃん。

今行くから。

やっと走り出した電車の窓から景色を眺める。

雨が降りそうだ。

電車を降りると、ちょうどぽつりと一粒の雨。

早くしなければ。

また、壊れたように走り出した。

次第に強くなる雨が、今日は邪魔に感じた。

走って、走って、走って─

自分の家より手前、古賀家の敷地に入る。

ピンポーン

『はーい』

奥から聞こえてきたのは、心地いい、大好きな人の声。

待ちきれずにドアを引く。

リビングから出てきた翔ちゃんに、おもいっきり抱きついた。
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