雨も好き。
お風呂に入りながら、ずっと気にかかっていることを考えていた。

─なぜ安藤瑛星はなっちゃんの告白を真に受けなかったのか。
なっちゃんでさえ気づいていなかった気持ちに気づいたのか。─

わからない。

しかし、僕以外になっちゃんをよく理解する奴が現れたことは確かだった。

なっちゃんが本気になるのも時間の問題だ。

─くそ。とられたくない。

「好きだよ、なっちゃん...」

声に出してみた。

それだけでもう恥ずかしい。それでも─

その瞬間、心の奥にかかっていた鍵が、かちゃりと、自分の中で音を立てた気がした。
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