雨も好き。
─「なっちゃん?いる?」

翔ちゃんだ。

「お弁当渡そうと思ったらいなくて...友達に聞いたらここだって言うから。」

また涙腺が緩む。

そして、嗚咽まじりの声で単語単語で状況を説明した。

翔ちゃんはその言葉をひとつひとつ丁寧に拾い上げて、優しく頷いてくれた。

きっと翔ちゃんは、今日は帰りな。とか言うんだろうなぁ。

そう思っていると、
「うん、まだ放課後があるよ。諦めるのは早いかな。」

へ?

翔ちゃんの作ってくれたお弁当を保健室で頬張る。

食べ終わった箱は翔ちゃんに回収され、とんっと背中を押される。

親指を立て、グーサインを出した翔ちゃんに、同じように返す。

やっぱり翔ちゃんのことはわからない。

しかし、翔ちゃんが行ってこいというんだ、きっとその方がいいに決まってる。

そのことが、あたしを勇気づけた。
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