雨も好き。
中学に上がっても、相変わらず二人で登校していた。
ほかの地区の奴らから、『付き合ってんの?』と聞かれることもしばしば。

なっちゃんは、可愛かった。
これは、僕が好きだからとかそういうことではなく、事実確実にモテ始めた。
本人はまったく気づいていない様子だったが。

ある日の帰り、なっちゃんがいきなり、
『あたしが好きだって言ったらどうする?』
と、聞いてきた。
頭の中が真っ白。
『あれだよ!?別にそういうわけじゃなくって、男子から見たらあたしってどんなんかなー。と思って!』
慌ててつけ足すなっちゃん。
隠れてないよ、顔、真っ赤。

─誰かに告白でもするのかな。

嫌だった。だから意地悪をした。

『やめといたら?』

我ながら最低だったと思う。

その後なっちゃんが告白した話も、振られた話も、付き合った話も耳にしなかったから、きっと実行していないのだろう。

ここで、僕の心に一つの箱が用意された。

この気持ちをしまっておく箱。

もしなっちゃんが誰かを好きと言ったら、応援できるように。
だって、なっちゃんが本音を出せるのは僕だけなのだから。
僕が応援しなきゃ。

それが固く鍵をかけた時の言い訳だった。

─本当はただの意気地無しだっただけなのに。
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