雨も好き。
「ただいまぁ...」

『ちょっと夏海、来なさい。』

お母さんが真面目な声で呼ぶ。

なんだろう?

「あんた...なにこれ!?」

テーブルの上には茶色い封筒に、【親展】のはんこがついてある。中身はない。

なぜなら─

中身はお母さんの手元。

そこに並んでいる数字は、40~80までの数字。かろうじて白黒。

「まって!赤点は回避したし、体育なんか80点だよ!?」
本当は素点で赤点があったなんて言えない。

「赤点なんかとったらただじゃおかないわよ。それよりお母さん、アヒルなんて見たことないわ。」

アヒルとは、『2』のこと。
うまいこと言うなぁ。

「あんた、二学期で評定4とらなきゃ、1年生の成績に2がつくのよ?わかってるの?」

つまり─
2学期で65点以上を取らなければならないということ。平常点を入れて赤点を回避したこのあたしがだ。

「とりあえず、課題全部終わらせて、このワークも全部できないと夏祭り行っちゃダメよ!わかった!?」
< 90 / 214 >

この作品をシェア

pagetop