君色想い
2章
失った言葉
ー 月曜日 ー
『おはよ、早希』
「…おはよ」
私はいつもより早く学校に着いて
机に頭を伏せたまま返事をした。
『今日早いな!』
いつもと変わらず拓也が話す。
それが何故かすごく腹立たしかった。
『…なんか、あった?』
何かを悟られるのが怖くて、まだ顔は伏せたまま、首を横に振った。
『そうか。自業自得だから何も言えねぇんだな。』
「は??」
顔を上げると、拓也はすぐ隣の席の机に腰を掛け、こっちを見ながらニヤニヤしていた。
『寝不足なんだろ?俺に当たんなよ、だりーな。』
「寝不足じゃないから。いちいち構わないで」
私がなんでこんなに拓也に不機嫌な態度を取っているのか、自分でも分からなかった。
呆れた様子の拓也をみて、すごく焦った。
「あ…今日ちょっと朝から体調悪いんだよね〜。近くにいると菌がうつるよ?」
『なんだそうゆう事か。大丈夫なのか?』
「…ん…まあ。」
自分に腹が立った。
拓也に当たってしまう自分が嫌だった。
「てゆうか…あの後…どうなったの?」
自分の心に留めていた言葉が、無意識に出てしまった。
『…ああ。』
「…なに?」
『…いや。…なんか…』
「…なに???」
『付き合う事になった』
「……」
言葉を失った。
断った理由を言いにいったんじゃないの?
なんで急に付き合うことになったの?
まじで意味わかんない。
一瞬で拓也の声がなにも聞こえなくなった。
泣き出しそうだった。
自分の今の顔が想像できた。
絶対に見せられなくて、黙って顔を伏せた。
『ちょ、聞いてんのか??』
「あ、あたし…トイレ」
『おい!大丈夫か?!』
拓也の声に振り向かず、一目散に廊下を走った。
「おはよう!早希ちゃん!」
明るい声がして、顔を上げると
ストレートヘアの七海ちゃんが立っていた。
「あ、おはよ」
私はすぐに顔を伏せた。
「どうしたの?大丈夫??」
七海ちゃんはすごく心配した様子で私の肩を持った。
「…やめてよ!!」
私は咄嗟に七海ちゃんの手を振り払った。
七海ちゃんは怯えた表情にも近い、とても驚いた顔をしていた。
「ごめんね、私、、保健室一緒に行こうか?」
「…大丈夫」
私はまた走って保健室へ向かった。
恥ずかしい…
なんでこんなに感情的になっちゃったんだろう…
もう逃げ出したくて仕方なかった。