バレンタイン狂詩曲(ラプソディー) 〜キスより甘くささやいて 番外編〜
その3 ライバル出現
水曜日。
毎週美咲目当てのガキがやってくる時間だ。(もちろん毎週欠かさずくるわけじゃないけど、)今では珍しい学ランを着ているから、海から見えるあの学校の生徒だろうと、思っている。俺は仕事に区切りを付け、戦闘モードに入ってしばし待つ。俺が、モニターの前で腰に手を当てて、佇んでいると、
「颯太、大人気ないぞ。」とオーナーが笑って、声をかける。俺は振り向き眉間にシワを作る。
「こっ、怖 すぎ。」とティールームに勤める圭介が首をすくめて、通り過ぎる。うるせーよ、あの高校生の態度は最近目に余る。美咲ちゃんと馴れ馴れしくよび、あんな仏頂面のおじさん(俺の事だ。)はやめて、俺の恋人になって。と堂々と口説いてきている。美咲は弟よりも年下の男なんて、相手にはしないだろうけど、クスクスわらって、柔らかい笑顔を見せているので、あのガキは調子に乗っているのだ。
気に入らない。
そのうえ、俺のケーキについて必ず感想を述べる。苦すぎる。とか、酔っ払う。とか、まあ、たまには美味かった。という事もあるが、それは決まって、美咲が勧めたケーキだ。
来た。アイツだ。
「美咲ちゃん。会いたかったよ。」とドアを開けて、真っ直ぐ美咲の前に立つ。
「田島君、いらっしゃい。」と美咲が笑いかけている。
俺は店に立つために厨房を後にする。俺が、眉間にシワを作り、ゆっくり、美咲の後ろに立つと、
「でたッ、仏頂面のジジイ。」とボソリという。ジジイって言いやがったな。俺がジジイだったら、オーナーはどうなる?とムッとする。
俺は機嫌の悪さを隠さずに
「俺が、ジジイだったら、同い年の美咲もババアってことかな?」と言ってやる。
「知らねーのか、ジジイ、美人は年は取らないんだよ。」と言い返して来た。しばし、睨み合う。美咲が呆れて、
「颯太、厨房にもどって。田島君はお客様でしょ。」と俺を上目遣いでみあげるので、俺はこれ見よがしに美咲の肩を抱いて、頭のてっぺんにキスをしてから、厨房に戻る。美咲が、顔を真っ赤に染め、オーナーが「おおっと、やっちゃったね。」と呟く。
「ジジイ、俺の美咲ちゃんに触るなーー!」と大声が聞こえてくる。俺は、勝利を確信する。負け犬の遠吠え。
きっと、後から美咲に怒られると思うけど、我慢できなかったのでしょうがない。
美咲は俺のオンナだ。
ガキにだって、容赦はしない。
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