バレンタイン狂詩曲(ラプソディー) 〜キスより甘くささやいて 番外編〜
うるさい声が収まって、あのガキは帰ってったみたいだ。
美咲が厨房に入ってくる。
「颯太、他のお客様に迷惑でしょう。」とちょっと、呆れた声を出す。
「あのガキが躾がなってないからだろ。人のものに手ェ出しちゃいけないって、教えてやっただけだよ。」と、俺に後悔はない。美咲は
「田島君、結構ケーキに興味を持ってくれてたと思うけど…」と残念そうな声を出す。俺は、へえ、と思う。あのガキは美咲だけじゃなくって、ケーキにも興味を持ってたのか。
「へえ。」とだけ言っておく。うーん、もしかしたら、美咲を理由にここに来る口実にしたかったのかも。と今更気付く。
分かりにくいんだよ。あのガキは。

俺も高校生の頃は自分でケーキを作るのが趣味だ。って言えなかったな。と思い出す。
ちょっと可哀想な事をしたかもって思った。
まあ、本気で美咲に惚れられてもこまるけれど。

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