バレンタイン狂詩曲(ラプソディー) 〜キスより甘くささやいて 番外編〜
仕事を終えて、車に乗り込む。美咲が大きく溜息をつく。
「陽介くんに先に渡されちゃったな。」と、言って、
「陽介くんって、パティシエになりたかったんだね。そして、颯太のケーキが好きなんだ。」と笑う。俺は返事をせずに、車を走らせる。
「美咲、夕飯食べて帰ろう」と誘うと、美咲は嬉しそうに頷いた。この2日間忙しかったから、疲れてるよな。
明日はgâteauは臨時休業だ。ゆっくり休ませてやりたい。
美咲と一緒の初めてのバレンタイン。やっと2人だけになれた。
今日は海沿いのイタリアンの店を予約してある。俺たちは洋館風に建てられた店にたどり着いた。
ヨーロッパや、アメリカじゃ、今日は愛を伝える日だよな。俺は何度でも愛を誓い合いたい。
美咲はいつもの山猫じゃないので、驚いて、俺を見る。
「たまには、レストランもいいだろ。」と笑いかけると、頬を染めて頷いた。
美咲をエスコートして、店に入ると、少し奥まった、仕切られた場所に案内された。美咲が、
「予約してあったの?」と聞くので、俺は笑って頷いた。嬉しそうに笑う美咲が可愛い。
「もうちょっと、おしゃれしてくるんだった。」とつぶやくので、
「美咲はどんな格好をしてても、綺麗だよ」とちょっと抱き寄せて、頬にキスをすると、美咲の顔が真っ赤になる。
俺たちは、新鮮なホタテや、白身魚のマリネを選んで、前菜にし、ソラマメのポタージュを頼んだ。トマトのパスタをシェアして、メインに伊勢海老を選んだ。たくさん笑い合いながら食事をして、デザートは家にチョコレートが待っているはずなので、エスプレッソだけを頼んだ。エスプレッソが運ばれてくるタイミングで、俺はレストランにとどけておいた、真っ赤なバラを美咲の年の数だけ贈り、美咲を抱きしめ、愛してると囁いた。美咲はすごく驚いて、瞳を潤ませながら、私も愛してるって、言って、俺の頬にキスしてくれた。
俺の、サプライズバレンタインは成功かな。
美咲が喜んでくれたみたいで嬉しい。






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