バレンタイン狂詩曲(ラプソディー) 〜キスより甘くささやいて 番外編〜
家に帰り着いて、玄関で深く唇を重ねる。俺が美咲を抱き上げて、階段を登ろうとすると、
「颯太にチョコレートを渡したい。」と美咲が一生懸命言うので、俺は足を止めて、美咲を抱き上げたまま、リビングに向かう。俺が、
「先に、ソファーでする?」と美咲に笑いかけると、美咲は真っ赤な顔で、
「ここで、降ろしてください。」と怒った声を出す。仕方ない。お預けだ。
美咲は冷蔵庫から、リボンをかけた包みを取り出して、
「ハッピーバレンタイン。あんまり上手じゃないけど…」と俺に渡して、俯いた。俺は、
「美咲の作ってくれた俺だけのチョコレート。すごく、嬉しい。」と美咲の顔を覗き込んで微笑むと、少し笑ってくれた。
美咲をソファーに座らせ、隣で包みを開ける。3種類の6個のチョコレートが入っていた。プレーンのもの。スライスアーモンドで飾られたもの。ホワイトチョコレートでコーテイングされたもの。って感じだ。
プレーンのモノを口に入れると、ウィスキーの香りがする。俺は
「俺が好きなモノ、入れてくれたんだ。」と微笑むと、美咲は恥ずかしそうに頷いた。
どれも俺の事を考えて、作られているみたいだ。すごく嬉しい。俺は美咲を押し倒して、捕まえ、美咲の口にチョコレートを入れると、そのまま、くちづけした。ふたりの口の中でチョコレートが溶ける。美咲は真っ赤になって、固まった。チョコレートがなくなると、美咲は、
「颯太ったら、信じられない。」と俺の腕の中で、もがく。
「スペシャルなチョコって感じじゃん。」と俺は笑って、さらに美咲の口にチョコレートを押し込んで、唇をつける。美咲が何か言おうとする度、深くくちづけしながら、チョコレートと、一緒に美咲の唇を味わうようにすると、美咲は少しずつ、諦めたみたいで、一緒にチョコレートを口の中で溶かして、食べさせ合う。6個とも一緒に食べ終わって、
「美咲メイドのチョコレート、どれもすごく美味しかった。」と言うと、美咲は
「もう、手作りはやめる。」と機嫌の悪い声で言う。
「美咲、怒ったの?」とちょっと心配になる。美咲は
「怒ってません!」と怒った声で言う。いや、その声は怒ってるだろ。とおかしくなる。ちょっと、調子に乗りすぎたかな。でもさ、
「俺さ、美咲が俺の事、考えながら作ってくれてたのがわかったから、すごく嬉しくなっちゃってさ。ちょっと、はしゃぎすぎた。ごめん。」と言ったら、
「怒ってないってば、ただ、すごーく恥ずかしいの!もう、トリュフのチョコは食べ飽きたし。」と横を向いてしまう。
拗ねている美咲がなんだかものすごく可愛く思えて、ギューっと抱きしめると、
「痛いよ颯太。」と小さな声で呟くので、さらに強く抱きしめ、
「大好きだよ。美咲」と言ったら、美咲は大きく溜息をついた後、
「私も大好きですよ。」と俺の瞳を真っ直ぐ見て笑った。

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