バレンタイン狂詩曲(ラプソディー) 〜キスより甘くささやいて 番外編〜
月曜日。gâteauは定休日だ。
美咲は朝寝坊に持ち込もうとする俺の腕とくちづけをを振り切り、ベットから抜け出す。
「颯太、練習の日は何日もないんだから、早く起きて。」と言いながら、部屋を出て行く。
……2人でのんびりする時間を削ってのチョコレート作り。
俺は間違った事を望んでしまったんだろうか?と少し、後悔しながら、ベットをノロノロと降りた。
窓の外は、天気が良く、陽の光が射している。今日は波も穏やかだ。
海岸沿いをドライブの方が断然よかった。とため息が出た。
シャワーを浴びて、リビングに入ると、美咲が、朝食の準備を終えていた。スクランブルエッグにベーコンにサラダとベーグル。フルーツにヨーグルトをかけたモノが今朝の朝食だ。ホットミルクに口をつけ、
「美咲、張り切ってる ?」となんだか、テキパキ動いているので聞くと、美咲は笑って、
「だって、パティシエにチョコレート作り教えてもらうんだから、緊張するでしょう?」と言う。
いや、ここはクッキングスクールじゃないんだからと思い、
「俺が、まるきり教えたら、美咲の手作りにならないじゃん。」と文句を言うと、美咲はアッと声を出して、
「そうか、そうだよね」と笑い出し、俺の瞳を覗き、
「パティシエの颯太に贈るんじゃなくって、恋人の颯太に贈るんだ。」と言って、なーんだ。ともう1度笑った。
「俺は恋人の美咲が俺のために作ってくれたチョコが食いたい。」と言って、美咲に笑いかけた。
やっと、俺の気持ちが伝わったみたいだ。
美咲は本当に恋愛に関することになると、びっくりするくらい鈍くなる。
仕事の時は周りへの気遣いは完璧で、俺が母親を亡くす前後は、あんなに痒い所に手が届くっていうくらい気がつく女だったのに。
アンバランスなオンナだ。とため息が出る。
まあ、そこも魅力のひとつっていう事にしておこう。
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