【同性愛】それでも好き
「…怖い顔をして睨めば、龍はすぐに怖がって逃げたから。気弱な男はもう俺に近寄らないだろうなって」
そういわれて思い出すのは、あの黒くて怖かった那智の姿。
怖くて、怖すぎて顔も見ることができなかった…あの那智が、今横で笑ってる。
「俺の計画通りに進んでる、このまま行けばまた変男に引っかかることもない。って…そう確信してた……、でも予想を飛び越えたのは向日葵自身だった」
急に空っぽになった声が寂しげに俺を通り過ぎる。
「…え?」
「それでもヒーは龍を追いかけた。俺じゃない…龍を追いかけて、今まで見たこともな笑顔で龍の話をして、泣かされて。…俺に縋り付いて『まただ』ってわんわん泣くんだろうなって…でも違うかった」
じっと俺を見るとはぁーっとため息が漏れていく。
「それでも、龍を追いかけた。一人で泣いて、一人で食堂に行って…。俺は…、俺はもっと透明になってたよ…でもそれでよくわかったよ。ヒーは、他の誰にも見せたことのなかった表情を持っていて、それを引き出したのは俺じゃない龍なんだって」
俺が引き出した?…そう言われても、俺は向日葵の表情をどれだけ知っているだろう?その数では那智には絶対に負ける。勝ち負けの問題じゃないことはわかっているけど、そうやって観客的にみれるということは、それだけ近くにいて向日葵をみてきたから…。
「傷つけていいよ…龍なら…。」
「…っは?」
いきなりの言葉に唖然としてしまう。今そんな話をしていたか?
「傷つけないことが、恋愛ってことじゃないんだってわかったから…」