ドロップアウト
「何してんだ?こんなとこで」
フランであろうその声は親しげにチェルノに声をかけた。
チェルノは思った。
この状況は非常にまずい。
この先にはソフィアがいる。
そしてチェルノの背後にはフランがいる。
勿論フランも王女は死んだのだと思っている。
だがフランは王女の、ソフィアの顔を知っている。チェルノは王族時代のソフィアの周囲の様子を本人から聞いていた。
そして、ソフィアを擁護した人物が自分の親友だと知った。
もし、ソフィアが生きていることをフランが知っても、フランはソフィアを擁護していた。口を割る可能性はほぼ0だろう。
だが、フランは父親の職業上、王族と関わることが多い。
フランにその気がなくとも、人間“うっかり”というものがある。
よってフランに知られればソフィアの居場所が王にバレる危険性が高まってしまう。
──いや待て、まずフランはただの通りすがりかもしれない。
そんな考えがチェルノの頭を過ぎった。
もしそうであれば何の心配もいらない。
ここまで僅かニ秒。
チェルノは頭の回転が速かった。