ドロップアウト
◇◇◇
食事が終わり身支度を整えたソフィアは未だダイニングで談笑をしている三人に向かって行ってきますと声をかける。
だが、マーシャから返ってきた言葉は想像していたものとは違っていた。
「あ、ソフィア!今日はあなたの誕生日でもあるし家族になってちょうど五年の日でもあるでしょ?だから今夜は御祝いパーティーをしようと思ってるの。」
「本当!やった。ありがとう!」
「フフっ。お礼を言うのはまだ早いわよ。今日は早く帰ってくるのよ!みんな楽しみにしてるんだから。」
ソフィアは元々このクライシア家の人間ではない。
ルークは焦げ茶色の髪に緑の瞳。マーシャは黒い髪に灰色の瞳。
この二人からホワイトに近いプラチナブロンドの髪にサファイアのような蒼い瞳のソフィアが産まれるはずがないのだ。
ソフィアの血筋はレアリード家、もとい王族の血筋だ。
今も王宮に住んでいれば、王の娘であったソフィアは王女ということになっていただろう。
だがソフィアは幼い頃から両親と城に使える使用人達に煙たがられる存在だった。
それ故、五年前にソフィアは王女の地位を剥奪され、王家を追放された。
無一物の状態で真夜中の城下に放り出され途方に暮れていたとき、軍の元帥であるルークに救われ、序列3位のクライシア家の養子となったのだ。
無論王女だった頃は両親や使用人達から産まれてきたことを咎められたりはしたが、誕生日の祝いなどはされたことがなかった。
このクライシア家に来てソフィアは初めて家族の温かさを知った。
この三人はソフィアにとってかけがえのない存在なのだ。