Another Existence
「ねぇ!いっちゃん、どーする?
ここはワイルドにど真ん中行っちゃう感じ?ねぇねぇ。」
どうするもこうするもあったもんじゃない。
飛龍に、…特に短気な弟に気付かれねぇように端通るのが得策だ。
逃げ腰みてぇで癪だが仕方が無い。
見つかって嫌味言われるよりマシだ。
「わざわざど真ん中行くような馬鹿は
祥太朗だけで十分。
端通るぞ。」
「あ、ですよねー。って俺の事さらっと
また貶さないでもらえる!?」
たかが暴走族の大名行列に付き合って居なくなるまで待ってやれる程俺もお人好しじゃない。
人の壁を腕で上手に流れに沿ってスッと掻き分けていった。
メガネを掛けて長い前髪を横に流しているため、地味な印象な生徒としか認識されず、飛龍の幹部の兄だと気付かれずに済んだ。
そして、飛龍達の居る中心部の横を通り過ぎ、バレなかった事に心の中で小さくガッツポーズをして、早く裏庭に行きたい一心で歩みを進めたが……
「ねえ待ってよいっちー、
なんで俺が居るのにスルーして行こうとしたの?ん?ほら言ってみ」
「チッ.....どーも。...別にそんなんじゃないですよ」
「俺に向かって舌打ちしてくんのいっちーぐらいだよ?でもそんな所もかわいー!」
このフェロモンチャラ男...もとい変態野郎は
飛龍の高校3年の先輩の幹部の
早見 翔ーハヤミ カケルーに腕を掴まれ阻止された事に
よって俺の希望は打ち砕かれる。
はぁ、最悪なパターンだ、コレは。
今日の星座占い1位だったはずなのに
なんだこの有様は。
俺達と飛龍が向かい合えば周りからはコソコソと話し声が聞こえたり驚きの声がしたりしてさっきとは少し違ったザワザワしたうるささが廊下に響いた。
不愉快に感じていると、早見に腕を引っ張られされるがままに飛龍の居る中心に連れてかれてしまった。
まあ、飛龍の奴等も俺の存在を不愉快に感じているようで早見を除いて眉を顰めている。
俺よりも身長が高い奴等から視線を外して視界をふっと下へ下げた拍子に背格好が同じの弟とバチッと目が合ってしまった。
すると、犬がガルルッと威嚇するみたいに鋭い睨みを効かせて来た。