草花治療師の恋文
……パタパタパタ
(あ…足音が聞こえる)
マーガレットの部屋の前に『返事』を置いたセイリンは、執事室には戻らず、途中の廊下で腕を組んで壁に寄りかかり立っていた。
マーガレットが『返事』を見てくれたのかが気になり、執事室には戻らなかったのだ。
離れていた足音が徐々に近づいてきた。
パタパタと聞こえる足音が廊下の角を曲がり、セイリンが待っていた通路にやってきた。
「セイ‼︎」
息を少し切らしながらマーガレットがきたのだ。
「マーガレット様、お返事見ていただけましたね?」
「見たわ‼︎」
答えたマーガレットは、いつものように明るく笑った。
その表情を見たセイリンは、ここ数年で一番の安堵の溜息をついた。
そして、同じ視線になるようにマーガレットの前にしゃがんだ。
「これが私のお返事でございます。」
セイリンは、マーガレットが両手で抱えている『返事』を指差した。
マーガレットの腕には『マーガレット』の花束が。
「私と同じ名前のお花ね!」
「はい。マーガレットを見ていると、いつも元気なマーガレット様を思い出し、心が温まります。」
そう答えると、マーガレットの目はキラキラ輝いた。
「本当に⁉︎」
「ええ、本当です。まぁ、時折小憎らしく思う事もありますが…。」
「なんですって?」
マーガレットはプッと頬を膨らませた。
「おっと失礼。」
セイリンはわざとらしく手で口元を押さえた。
それをみたマーガレットはプッと吹き出した。
「本当にセイは意地悪ね‼︎」
マーガレットはケラケラと笑った。
セイリンもクスクスと笑った。
「さぁ、せっかくなのでお花を花瓶に生けましょう。」
「うん!」
無事仲直りをした2人は、その後順調に文通を続けた。