草花治療師の恋文
《現在……テンペスト邸内 亡きマーガレットの部屋》
「私もセイリン様からお聞きしたお話でございますが…。これが…マーガレット様が手紙を大切にされていた意味だと思われます。」
執事のリーは、ふぅ…と息を吐いた。
「へぇ。ばーさんにも子供の時があったんだなぁ。」
話を聞き終えたサクマが、両手を頭の後ろに組んでソファの背にもたれた。
「当たり前だろ?誰だって幼少期はあるんだから。」
リアンは冷ややかな目でサクマを見た。
「そうでございますね。」
リーはクスッと笑った。
「そりゃそうだけど。」
サクマは少しムスッとした。
サクマが物心ついた時には、マーガレットはすでにテンペスト家の偉大な当主で、祖母だった。
そんな祖母の幼少期なんて想像できない。
「本当に…元気でテンペスト家の明るい花でございました。」
リーは目を伏せながら微笑んだ。
その姿にイアンは何か言いたそうにしていた。
リーはそのことに気が付き、少し考えたのちに口を開いた。
「…本当は…秘密にしておかないといけないのですが…」
「なに?」
リーの言葉にリアンが反応した。
いち執事とのやりとりした手紙を、あんなに頑丈に封印するんだろうか?
リアンは疑問に思っていた。
「恐らく…マーガレット様は、ご自身の人生を振り返り、孫であるお2人に知って欲しいのではないかと思います。なのでもう少しだけ…私の知っている事をお話しさせていただいてもよろしいでしょうか?」
「もちろんだよ。」
リアンは頷いた。
「ありがとうございます。」
リーはお辞儀をした。
「では…これはもう私以外、知るものはいない事ですが…」
リーはゆっくりと話を続けた。