草花治療師の恋文

「セイリン。」


マーガレットの部屋を出て、執事室に帰る途中、セイリンは呼び止められた。

セイリンはその声を聞いて慌てて振り返った。


「ライザ様!」


セイリンはライザに向って礼をした。


「頭をあげよ、セイリン。」

「はい。」


セイリンは頭をあげて、ライザを見た。

セイリンとほぼ同じの背丈のライザと目が合うと、


「…何か言いたそうな顔をしているな。」

「えっ⁉︎いえそんな…!」


テンペスト家の当主として一族を守り、従業員も家族同様に厳しく、優しく接してくれるライザは、マーガレットと同じ色の銀髪をオールバックにし、切れ長の目でスッとした顔立ち、40歳手前だが、パーティーに出れば既婚者とわかっていても女性が寄ってくる男前だ。

男のセイリンでさえ、格好良いと密かに憧れてしまうほどだ。


「本当に何も言いたいこと、聞きたいことはないのか?」


ライザはセイリンに問いかけた。

その問いに、セイリンはマーガレットの事を聞かれているのだと気付いた。


「…マーガレット様の声のことでございますか?」


ライザは少し困ったような表情で、ふっと笑った。


「さすがセイリン。ストレートだな。」

「えっ⁉︎違いましたか⁉︎」


セイリンは自分の発言が、失言になったのかと焦った。

その姿を見てライザは「ハハッ」と声を出して笑った。


「いや、違わない。」


そう言うとライザはこっちへと手招きして、セイリンを自室へ連れて行った。


< 15 / 41 >

この作品をシェア

pagetop