草花治療師の恋文
「セイリン。」
マーガレットの部屋を出て、執事室に帰る途中、セイリンは呼び止められた。
セイリンはその声を聞いて慌てて振り返った。
「ライザ様!」
セイリンはライザに向って礼をした。
「頭をあげよ、セイリン。」
「はい。」
セイリンは頭をあげて、ライザを見た。
セイリンとほぼ同じの背丈のライザと目が合うと、
「…何か言いたそうな顔をしているな。」
「えっ⁉︎いえそんな…!」
テンペスト家の当主として一族を守り、従業員も家族同様に厳しく、優しく接してくれるライザは、マーガレットと同じ色の銀髪をオールバックにし、切れ長の目でスッとした顔立ち、40歳手前だが、パーティーに出れば既婚者とわかっていても女性が寄ってくる男前だ。
男のセイリンでさえ、格好良いと密かに憧れてしまうほどだ。
「本当に何も言いたいこと、聞きたいことはないのか?」
ライザはセイリンに問いかけた。
その問いに、セイリンはマーガレットの事を聞かれているのだと気付いた。
「…マーガレット様の声のことでございますか?」
ライザは少し困ったような表情で、ふっと笑った。
「さすがセイリン。ストレートだな。」
「えっ⁉︎違いましたか⁉︎」
セイリンは自分の発言が、失言になったのかと焦った。
その姿を見てライザは「ハハッ」と声を出して笑った。
「いや、違わない。」
そう言うとライザはこっちへと手招きして、セイリンを自室へ連れて行った。