草花治療師の恋文
第1章
「リアン!この棚はどこに移動したらいいんだ⁉︎」
「知らないよ。リーに聞いてよ。」
「なにー⁉︎この状態でどうやって聞いたらいいんだよ‼︎って…わっ…‼︎」
大きな声で怒鳴っていたサクマは、動かそうとしていた本棚と一緒に床に倒れた。
この地域では有名で大きな屋敷に、大きな音が響き渡った。
「どうなさいましたか⁉︎」
慌てて音がした部屋に入ってきたのは執事のリーだ。
「リー‼︎なんとかしろ‼︎」
「なんとかしろじゃなくて、助けてくださいだろ?サクマ。」
「うるさいぞリアン‼︎お前も手伝え‼︎」
危うく本棚の下敷きになりかけたサクマは、床に散らばった本や小物に混ざって転がっていた。
「おやおや…。サクマ様、お怪我はございませんか?」
執事のリーは床で騒ぐサクマの姿をみてホッとし、サクマに手を差し伸べた。
「怪我はない。だが、棚がダメになったかもしれない。」
「それは仕方が無いこと。それよりも、サクマ様にお怪我がなくてなによりです。」
「すまんな。」
サクマはリーに引き起こされた。
つい偉そうな発言をしてしまうサクマだが、助けてもらった時は素直に礼を言う。
「このお部屋の片付けはお2人では大変でございましょうから、私を含めてあと数人補助に入るように手配して参ります。」
「そうだね。そうしてもらえると助かるよ。」
リーは部屋を出て、片付けの応援を呼びに行った。
「そもそも、なんで俺たちがばあさんの部屋の片付けをしないといけないんだ。」
体を起こして埃を払いながら、すぐ近くにあったソファにサクマは腰を掛けた。
180cmを越える長身、短髪黒髪のサクマは、背を丸め前にうなだれた。黒髪は埃で少し白くなっている。
「仕方がないよ。おばあ様の言うことは絶対なんだし。それがたとえ遺言書でもね。」
床に散らばった本を拾いながら、リアンはサクマの不満に答えた。
17歳にしては落ち着きがあり、同年齢の従兄弟のサクマへの対処をスマートにこなすリアンは、肩よりやや長い銀髪を一つにまとめている。
サクマより身長が低いこともあり、少し繊細な印象を与えている。
「おばあ様は亡くなってもおばあ様だね。」
「全くだ。」
サクマはため息をつきながら立ち上がり、床に落ちている本を拾いだした。