草花治療師の恋文
《4年前》
「マーガレット、薬草堂の薬長にご挨拶をしてきなさい。私は向こうに呼ばれたので行ってくる。」
「はい、お父様。」
薬長のサバンは、マーガレットが住む町ログスの住民の中で一番の高齢で、今日のような治療師や薬草師の集まりの場には滅多に出てこない。
しかし今回は珍しく出席の知らせがテンペスト家にも届いていた。
マーガレットはサバンに会ったことはあったが、ほんの数回。
治療師にとって薬草師はパートナーで、切っても切り離せない存在である。
その長となれば、挨拶をしないわけにはいかない。
マーガレットが1人でサバンを探し出してすぐ、声がかかった。
「やぁマーガレット、誰をお探しかな?」
「クルガ叔父様!」
マーガレットは声の主を見て笑顔になった。
「薬長のサバン様を探しているの。どこにいらっしゃるかご存知?」
「あぁ、サバン様かい?確か庭園の方で見かけたよ。一緒にいってあげよう。」
クルガはマーガレットの返事を待たずに手を引いて移動した。
マーガレットは父ライザと手をつないで歩いた事が一度もない。
だからそれが嬉しかった。
しかしこの後、マーガレットにとって辛い真実を突き付けられる事ことになる。