草花治療師の恋文

セイリンは仕事の机までもどり、封をしていた小さな花柄のシールを剥がし、中の便箋を出して開いた。


『セイリンへ』


見出しにはセイリンの名前が書かれていた。

セイリンが提案した通り、ペンではなくて想記で施された手紙だ。

ペンと想記の違いは【色】である。

文字と想記した土台、手紙なら便箋自体に色が付くのだ。

色は施想者によって異なり、マーガレットはピンク基調の色だ。

そして、ピンク色で一言。


『好きな花は何?』


それだけが書かれていた。


「ぶふっ…‼︎」


セイリンは思わず吹き出した。


(本当に一言だけだ。)


セイリンはクスクスと笑い、また溜息をついた。

たった一言。

想記が嫌いでいつも逃げてばかりのマーガレットが、たった一言しか記せなかった事を恥じながらも、その一言の為だけにセイリンの元にやってきたのだ。

その行動が、マーガレットにとってどれだけ勇気のいる事だったか。

生まれてからずっと側にいるセイリンにはよくわかった。

セイリンは机に突っ伏して、両腕で頭を抱えた。


(どうするかな…)


セイリンはしばらくじっとしていたが、何かを思いついたかのように立ち上がり、執事室を後にした。
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