夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)
ここは総合学園だが、あたりまえに大学部門が得ている補助金が一番大きい。
まずはそれを把握しようと考えた。
庶務部に入ると、カウンター近くの席にいた若い女の子と目があう。
自分の容姿の使い方は心得ている。
にっこりと笑いかけると、女の子の顔が輝いた。
「プロジェクトの内藤と申しますが、橘樹さんはどちらでしょうか?」
「はい」
いや、返事が欲しいわけじゃない。
きらきらした眼でみつめられたままなのに、宗雅は質問をもう一度繰り返した。
「橘樹さんですか?
ええと、席はあそこですけど。
あれ、トイレかな」
彼女が指した先は誰もいなかった。