夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)


ここは総合学園だが、あたりまえに大学部門が得ている補助金が一番大きい。


まずはそれを把握しようと考えた。


庶務部に入ると、カウンター近くの席にいた若い女の子と目があう。


自分の容姿の使い方は心得ている。


にっこりと笑いかけると、女の子の顔が輝いた。


「プロジェクトの内藤と申しますが、橘樹さんはどちらでしょうか?」
「はい」


いや、返事が欲しいわけじゃない。


きらきらした眼でみつめられたままなのに、宗雅は質問をもう一度繰り返した。


「橘樹さんですか?
 ええと、席はあそこですけど。
 あれ、トイレかな」


彼女が指した先は誰もいなかった。
< 10 / 334 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop