夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)
「すぐ戻りますか?」
「だと思います。
どうぞこちらでお待ちください」
本当だろうな。
と宗雅は内心で突っ込んだが、さわやかに礼を言って、カウンターの隙間を通った。
庶務の若い子に嬉々として案内され、用意された丸椅子に腰をかけた。
ちらちらと感じる視線に、気分は動物園のパンダだ。
早く戻ってきてほしい。
宗雅は腕時計をちらりと見て、こっそりとため息をついて、あらためて“橘樹”の机を見た。
パソコンンのディスプレーの左右は、フラットファイルがびっしりと並び、さらにその上に横積みされている。
机の上はキーボードの範囲以外は、書類で埋もれていた。
左右の高さは、崩れないのが不思議なほどだ。
その机の周りのキャビネにも余波が広がっている。
茶けた紙ファイルや、フラットファイルがびっしりと詰め込まれ、なぜか雑草の茂った鉢がキャビネの上に並んでいた。