夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)


毛足の長いじゅうたんが音を吸い取り、建物の中は静かだ。


大会議室に入ると、入り口に立っていた秘書が軽く会釈をした。


見覚えがある。


そうだ、この間の若手職員の飲み会とかで一緒だった。


内心で舌打ちする。


だからあの飲み会、気が進まなかったんだ。


向こうも気が付いたらしい。


「内藤です」

「この間はお疲れ様でした」


名乗ると、小声で挨拶を返してきて、にっこりと笑う。


「お席はこちらです」


席はほとんど埋まっていた。


暇な奴らだ。


また胸の中で毒づき、案内された席に着いた。
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