夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)


「ご足労頂いて、すいません。
 お電話いただけましたら、事前に出しておいたのですが」


後ろからついてきている宗雅に、歩きながら半身だけ振り返り頭を下げた。


「いえ、こちらがお願いすることですから」


かすかに皮肉を混ぜると、碧はわずかに首を傾げた。


微妙なニュアンスを感じ取ったのか。


宗司は気をそらせるように、話を続けた。


「橘樹さんは、補助金を担当して何年ぐらいですか?」

「今年で8年目になります」


碧はさらりと答えた。


宗雅は内心ぎょっとした。


就職と同時に担当したとしても、年上ということだ。
< 14 / 334 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop