夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)
「ご足労頂いて、すいません。
お電話いただけましたら、事前に出しておいたのですが」
後ろからついてきている宗雅に、歩きながら半身だけ振り返り頭を下げた。
「いえ、こちらがお願いすることですから」
かすかに皮肉を混ぜると、碧はわずかに首を傾げた。
微妙なニュアンスを感じ取ったのか。
宗司は気をそらせるように、話を続けた。
「橘樹さんは、補助金を担当して何年ぐらいですか?」
「今年で8年目になります」
碧はさらりと答えた。
宗雅は内心ぎょっとした。
就職と同時に担当したとしても、年上ということだ。