夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)
「というよりも、入れないので・・」
ドアを開けた細い隙間から中が見えるように、いくぶんか身を引いた。
「なるほど」
キャビネがいっぱいなのはもちろん、通路まで段ボールが積み上がり、もはや道が無い。
床に置かれた段ボールで、ドアもそれ以上は開かないのだ。
碧は細身の体を部屋へ滑り込ませていった。
薄暗い照明の下、段ボールの山に隠れて姿が見えないが、バサバサとファイルを動かす音はする。
ややして碧はB4ファイルを2冊抱えて出てきた。
「一般補助はいいんですよね?」
相変わらずまっすぐな視線。
裏の無い眼差しだと思う。
「内藤さん?」
「はい。
とりあえず、今日はこっちだけで」
宗雅は見つめていたとは悟られないように視線をさりげなく外し、碧が抱えていたファイルを取り上げた。