夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)


外の様子を伺うと、一向に化粧が終わる気配は無い。


碧はさりげなく、そして素早くトイレを後にすることに決めた。


個室から出て手を洗おうと洗面台に近づくと、武下が鏡越しにじっとみつめてくる。


「ねえ、橘樹さん。
 プロジェクトの内藤さんと業務が一緒ですよね?」


いきなりなんだ。


「ランチとか、一緒に行かれます?」

「い・・いえ」

「そっかー」


なんか感じ悪いな。


「内藤さん、理事長の息子さんなんですよ」


秘書の武下は鏡に向かって顎を突き出し、くちびるにグロスをのせる。


くすりと鏡越しに笑われた。
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