夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)
リビングには宗雅がいる。
いつも通り、終電ぎりぎりまで仕事をした。
駅へ急ごうとしたら“タクシーで帰る”と言いだし、送ってくれて、そのまま一緒に降りてきた。
「今夜、泊めて」
にっこりとした笑顔。
思いっきり悪そうな顔だった。
そんなことを言えず、固まっていると宗雅はマンションの中へ入っていってしまい、こうなっている。
ありえない。
科研が始まってから、忙しくて女子力は低下しているのに。
乱雑な部屋を見て、宗雅はくすりと笑っていた。
「だから嫌だって言ったのに」
思わず小声で愚痴ると、頭をポンポンと叩かれた。
「予想通りですけど。
碧さん、らしい?」
ちっとも嬉しくない。
名前を呼んでくれてたのは嬉しいけど。