夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)
「碧さん?」
「あ?羽虫?」
「刺された?」
「大丈夫」
「ん」
碧は名前で呼ばれて少しほっとした。
仕事の時は苗字でしか呼ばれない。
今、名前を呼んでくれたということは、プライベートの時間になったということで、一緒に部屋に帰る可能性が高い。
その通りに宗雅はいつものようにタクシーを止めた。
いつもと違うのは、少し不機嫌そうなことだ。
碧が色々と自分の行動を振り返っていると、手が暖かいものに包まれた。
宗雅がドアに頬杖をつき、窓の外を眺めたまま、碧の手を握っていた。