夜のひそやかな楽しみ (Spin off 追加しました)
大学職員にとって、春は嵐の時期だ。
新入生へのあらゆる行事が目白押しで、案内・誘導・受付に全職員が駆り出される。
目立つ部分でも忙しいが、目立たない部分でも忙しい。
文科省や私学事業団から、毎年恒例の調査もやって来ているのだ。
碧(みどり)は、その調査の担当だ。
今年度の調査要項のページをめくると、事務室のざわめきが増した。
新入職員か異動者の挨拶だろうか。
集中力がまた途切れる。
これだといつも通り、残業決定だ。
というか、5時以降の静かな環境でないと、落ち着いて調査の業務なんてできない。
ため息をこぼしながら、視線をめぐらせた。
庶務課や調査課の詰め込まれている、狭い事務室へ入ってきたのは、初々しい新人などではなかった。
男の色気が出てきた年代の集団。
どこか前時代的な雰囲気の事務室で、そこだけ別世界だった。